電波系取材雑記

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神聖なる儀式

 日本国の議会である国会は、テレビで見て何となく知ってる。でも自分たちに一番馴染みのあるはずの区市町村の議会と言うのは正直、今まで見たことがなかった。
 文京区の知り合いにそのことを話したら、後日、区議会傍聴のお誘いメールが届いた。じゃあ一度覗きにでも行ってみるか、ということになり、早速区議会での一般質問を傍聴することになった。
 当日、文京シビックホール23階の議会事務局で住所と名前を記入した。それだけで議会場に入れる。いたって簡単な手続きだ。
 議会場のドアを押して中に入った。半円に近い扇型の部屋。思ったより部屋が小さくて驚いた。
 ちょうどそのとき、質問に立っていたのは、30半ばあたりの若い議員。区のタバコ対策やら保育園の待機児対策、青少年の居場所問題などについて、持ってきた原稿を区長に向かって読み上げていた。ときどきつっかえたりしているので、多分、新米若手議員さんといったところだろう。
 一連の質問の後、区長がまとめて回答を行った。これも何だか原稿丸読みの感じ。ただし、明らかに質問者よりは慣れた口調ではあった。
 このとき、議会場内ではすさまじい居眠り旋風が巻き起こっていた。出席議員35人中、10名が夢の中へ。2名が退席。行政側も17名中、助役、収入役、教育長等、正面5人 と奥の2名がお眠の時間。なんと傍聴席も20名中10名が船漕ぎ状態(全て実測)。
 どこかの週刊誌に「文京区議会場は実は巨大なα波発生装置であった」とスクープされても誰も文句は言えないはず。
 質問内容や回答内容があらかじめ決まっている質疑応答。消化しなくてはいけない本会議。シナリオ通りに動く役者たち。すべてが予定調和に進んで行く。まさに「マツリゴト」。議会は儀式の場所だと思った。それはある程度予想通りでもあったが。
 僕は決して「儀式」自体が悪いとは思っていない。日本の、カタチを重んずる文化の中での、こういう施策決定システムがあっても、別にそれはそれで全体としてきちんと機能している限り問題ないと思っている。
  ただひとつ問題だと思ったのは、「議会というものが、区の偉いさんたちを一同に会して行う『儀式』である」という事実を、最初から標榜していない部分である。
  区は区民に、議会をまるで「筋書きのないドラマが日夜熱く演じられている場所」であるかのように印象付けているきらいがある。そこのギャップが、区民の区政への誤解を与えるひとつの原因となっているのではないかと思う。
  実はそう言った実務的で熱い議論は、議会に上げられる前に、関係議員や行政各局との間で充分に斗わされているものである。あの新米若手(?)議員も、質問に立つ前から十分な事柄の調査、関係者との調整を綿密に進めていたに違いない。
  しかし、その辺りの事情を理解しないで、本会議の実態を知った時の区民の失望感というのは計り知れないものがあるだろうし、区政に期待を持っている区民であればあるほどその落胆は大きくなる。
  僕は、議会が「儀式宣言」できないのであれば、いっそのこと議会の傍聴席なんて全部撤去して完全クローズドにしちゃえばいいのに、と本会議を傍聴していて本気で思っ た。 (2002.6)